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定期借家の質問と回答集「その1」

質問

定期借家契約はなぜ必要なのですか?普通借家契約でも、借家期間は明示されているはずですが?

回答

たしかに従来型の普通借家契約においても、契約でその期間を定めるのが普通です。しかし借地借家法第26条(建物賃貸借契約の更新)、あるいは借地借家法第27条(解約による建物賃貸借の終了)の規定により、借家契約期間の満了をもって借家契約を確定的に終了することは実務上難しい状態にあります。加えて借地借家法第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)によって貸主が建物を返還してもらうには、正当事由(貸主がその建物を自己使用する理由等)が必要であり、さらにその場合でも、貸主は借主に対して財産上の給付(立退き料の支払い、又は、類似の代替家屋の提供)が要求される場合があります。
つまり、従来型普通借家契約において期間の定めがあっても、それにより確定的に契約が終了するわけではなく、借主が契約の終了を受け入れる場合でなければ、更新することが原則となります。このことが、契約期間や収益の予測可能性を失わせて、良質な借家供給を阻害する要因となり、わが国の賃貸住宅市場を歪ませています。
ですから、期限がきたら借家契約は確定的に終了する、という「定期借家制度」が必要となるわけです。

質問

建物を定期借家で貸す場合、契約期間を定めなければなりませんか?

回答

定期借家制度では、あらかじめ定められた期間(確定期限)を貸す賃貸借契約だけが認められています。契約期間が満了すると確定的に賃貸借契約が終了する契約形態です。したがって、契約時に貸主と借主の間で賃貸借契約について一定の期間(始期と終期)を定めなければなりません。20年以上の長期でも、1年未満の短期でも、貸主と借主の合意があれば自由に決められます。居住用の場合、通常は2年契約が多いようです。
契約締結時に一定の期間を定めないと、定期借家契約と認められず、普通借家契約として法定更新(借地借家法第26条)や正当事由(借地借家法第28条)等の規定が適用されますから、注意が必要です。
契約期間終了後は、貸主、借主合意の上、再契約することが可能です。また、再契約の契約期間も当初の契約期間に関係なく定めることができます。

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質問

「定期借家契約では、期限が来たら借家契約は確定的に終了する」ということですが、期間満了後引き続いて借りたいという場合はどうするのですか?

回答

まず、ご注意いただきたいのですが、定期借家契約では、期間満了をもって借家契約関係は終了するので、更新という概念はありません。したがって、引き続いて借りたいという場合は、再契約となります。ここが普通借家契約と違う重要なところです。従来型の普通借家契約においては、借家契約の期間が満了した際の更新には、法律の定めにより更新する法定更新と、当事者の話し合いで更新される合意更新の二つがあります。
法定更新とは、契約期間が満了しても、貸主に正当事由がない限り貸主は更新を拒絶できず、法により自動的に更新されることです。法定更新後の借家契約は、期間の定めなき借家契約となり、かつ契約条件は従前と同一条件とみなされます(借地借家法第26条)。
合意更新の場合は、合意条件を話し合って更新契約を締結するものですが、合意ができないまま期限が到来した場合は法定更新(この場合、従前と同一条件で期間の定めのない契約として更新される)となるおそれが生じますし、継続賃料抑制主義の下では改定家賃が市場家賃よりも低く抑えられるおそれもあります。
定期借家契約では、法定更新も合意更新もありません。すべて再契約となります。

質問

定期借家契約は必ず公正証書でなければなりませんか?

回答

必ずしも公正証書の必要はありません。借地借家法(第38条1項)では、公正証書等としており、定期借家契約である旨(契約の更新がなく期間満了をもって終了すること等)が明記してあれば、別の契約書形態でもよいとしています。事業用建物の賃貸借契約の場合は長期契約の例もありますが、一般的な居住用賃貸借期間は、2~3年が多いと思われます。短い賃貸借期間の契約に、公正証書を義務づけることは、公証人の手数料もかかり手間もかかります。つまり当事者の負担増となりますので、当事者の意思が確認できれば、公正証書以外の契約書形態でもよいとしたわけです。

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